Story
柱を、遺す。棲家を、継ぐ。
解体で現れた柱や梁は、撤去せずに空間の骨格として残すことにした。新建材で覆い隠すのではなく、木そのものの表情を見せることで、この家が歩んできた時間を暮らしの中に留めている。
リビングの壁一面には、猫のための止まり木と棚を組み込んだ。人の動線とは別に、高い場所を移動する猫の視線が生まれ、同じ部屋の中に二つの高さの暮らしが重なる。無垢の棚板は光を受けて淡く陰影を落とし、家具のようでいて建築の一部でもある。
キッチンは黒を基調に、真鍮のハンドルで静かな艶を添えた。西日が差し込む窓辺は、料理をする手元にも、リビングでくつろぐ家族にもやわらかく届く。新しくしないで、継ぐ。柱も、光も、猫との時間も、この家に住み継がれていく。


