法規研究室

実家を「特定空家」にしない——空家法という法規の盾

公開2026.08.04 更新2026.08.04
実家を「特定空家」にしない——空家法という法規の盾

相続した実家が空き家のまま放置されると、法律上「特定空家」に指定され、税負担の増加や行政指導の対象となる可能性があります。法規研究室が、空家等対策特別措置法の要点と、実家を資産として住み継ぐための考え方を整理します。

特定空家とは何か——放置がもたらす法的・経済的リスク

平成二十七年に全面施行された空家等対策特別措置法は、適切に管理されていない空き家が周辺地域に及ぼす影響を法的に規律するために制定された法律です。この法律において「特定空家」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態、著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると市区町村が認定した空き家を指します。相続した実家であっても、この基準に該当すれば行政の判断により特定空家に指定される可能性があるとされています。

特定空家に指定された場合、所有者にとって最も現実的な影響は固定資産税の負担増であると考えられます。住宅が建つ土地には住宅用地特例が適用され、固定資産税評価額が大幅に軽減されていますが、特定空家として勧告を受けた土地はこの特例の対象から除外される仕組みとなっています。結果として、これまでの数倍にあたる固定資産税が課される事態も想定されます。さらに指導や勧告に応じないまま状態が改善されない場合には、命令、行政代執行へと進む可能性があり、代執行に要した費用は所有者に請求される仕組みとなっています。相続した実家を「とりあえず空けたまま」にしておくことが、法的にも経済的にも看過できないリスクを伴う判断であることが分かります。

空家等対策特別措置法が求める所有者の責務

この法律の根底にあるのは、空き家の管理責任はまず第一に所有者にあるという考え方です。法律は、空家等の所有者又は管理者に対し、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等を適切に管理するよう努めなければならないと定めています。相続によって実家を取得した時点で、居住の有無にかかわらず、この管理責務は相続人に引き継がれると解されます。市区町村は必要に応じて立入調査を行い、状態に応じて助言、指導、勧告、命令という段階を踏んで所有者に是正を求める権限を有しています。

相続人が複数存在する場合、実家の管理責任の所在が曖昧になりやすいことも実務上しばしば指摘される点です。遺産分割が未了のまま放置された実家は、法律上は相続人全員が共有者として管理義務を負う状態にあると考えられ、誰か一人が対応すればよいという単純な話ではありません。こうした事情も踏まえ、相続発生後は早い段階で実家の今後の扱いについて相続人間で話し合いを持ち、管理責任の所在を明確にしておくことが、法的リスクを未然に防ぐ第一歩になると言えるでしょう。

特定空家に至る前に——早期の見極めと判断の基準

特定空家という状態は、ある日突然訪れるものではなく、管理が行き届かない期間が積み重なった結果として生じるものと理解されています。相続発生の時点で実家が空き家になることが見込まれる場合、その時点から将来の選択肢を検討し始めることが望ましいと考えられます。定期的な換気や通水、庭木の手入れ、郵便物の管理といった日常的な対応だけでも、老朽化の進行を遅らせ、周辺への影響を抑えることにつながります。

一方で、こうした維持管理はあくまで時間を稼ぐための措置であり、根本的な解決策ではありません。誰も住まない実家を維持し続けることには限界があり、いずれは活用するか、手放すかという判断を迫られる場面が訪れます。法規研究室としては、この判断を先送りにせず、実家の状態や立地、家族の意向を早い段階で棚卸ししておくことが、特定空家という事態を避けるための最も確実な備えであると考えています。

住み継ぐ選択——実家を資産として蘇らせるリノベーションの視点

空家等対策特別措置法への対応は、法律上のリスクを回避するという消極的な目的にとどまるものではないと私たちは考えています。むしろ、実家という資産の価値をどのように次の世代へ引き継ぐかという、より積極的な問いへの入口として捉えることができるのではないでしょうか。とりわけ長年にわたり家族の歴史を刻んできた実家は、単なる不動産としての価値を超えた意味を持つ場合が少なくありません。取り壊すのではなく、住み継ぐという選択肢を検討する余地は、多くの実家に残されていると考えられます。

「いまある家を、百年へ」という視点に立てば、実家をリノベーションによって現代の暮らしに合わせて再生することは、法的リスクの解消と資産価値の維持という二つの課題に同時に応える方法のひとつと言えます。経営者や資産家にとって、実家は単なる住まい以上に、一族の資産承継や家族の物語を象徴する存在であることも多いはずです。空き家対策という法規の視点から出発しつつ、最終的には実家をどのような形で次代へ手渡すかという、より本質的な問いに向き合うことこそが、この法律と向き合う本当の意味であると私たちは考えています。

よくあるご質問

実家が特定空家に指定されると、どのような通知が来るのですか。

一般的には、まず市区町村による立入調査が行われ、状態に応じて助言や指導の通知が届くとされています。改善が見られない場合には勧告、さらに命令へと段階が進み、それでも対応がなされない場合に行政代執行に至る可能性があると理解されています。

相続放棄をすれば実家の管理責任を免れることができますか。

相続放棄が受理されれば法律上の所有権は失われますが、実際には他の相続人や次順位の相続人に管理責任が移るにすぎず、空き家そのものの管理課題が消えるわけではないと考えられます。放棄の判断は慎重に行う必要があります。

実家をリノベーションすることには、法規上どのようなメリットがありますか。

人が継続的に居住し適切に管理される状態を維持できれば、特定空家に該当する可能性は大きく低下すると考えられます。加えて、資産としての価値を保ちながら次世代へ引き継げる点も、大きな意義のひとつと言えるでしょう。

If you are considering a home renovation, please feel free to consult with us.
We offer free consultations and estimates.

Contact
設計・デザイン YES archi LAB × 施工 株式会社イエスリフォーム
東京都中央区東日本橋1-3-9 大内ビル1F/2F / TEL 03-6667-0781