素材研究室

ウォールナットと欅——邸宅家具材の樹種選びと経年美

公開2026.08.03 更新2026.08.03
ウォールナットと欅——邸宅家具材の樹種選びと経年美

邸宅にふさわしい家具材とは何か。ウォールナットと欅、二つの樹種はそれぞれ異なる個性を宿し、住まい手とともに歳月を重ねていきます。素材選びの奥にある思想を、素材研究室の視点でご紹介します。

家具材としての樹種選び——硬さ・木目・色調の見極め

邸宅にふさわしい家具材を選ぶという行為は、単なる素材の比較にとどまりません。硬さ、木目の表情、色調の深み。それぞれの樹種が持つ固有の性質を見極め、その空間にどのような時間を刻んでいくかを想像する作業でもあります。

硬い樹種は傷がつきにくく、長年の使用にも耐える一方で、加工の難しさから職人の技量が問われます。逆に柔らかな樹種は加工性に優れますが、日々の暮らしの中でつく傷跡もまた、その家具の履歴として受け止める姿勢が求められます。どちらが優れているという話ではなく、住まい手の暮らし方に寄り添う樹種を選ぶことこそが、家具材選びの本質だと考えています。

ウォールナットの個性——落ち着きと深みを湛える色調

ウォールナットは、チョコレートを思わせる深い茶褐色と、緩やかにうねる木目が特徴の樹種です。硬さと粘りを兼ね備え、加工後の狂いが少ないことから、家具材として世界的に高く評価されてきました。空間に落ち着きと重厚感をもたらす色調は、洋の東西を問わず邸宅の設えに馴染みます。

経年によって色味がやや明るく変化していく性質もウォールナットの魅力のひとつです。新材の時点での深い色合いとはまた異なる、時を経てこそ現れる柔らかな艶が、この樹種を長く愛される存在にしています。

欅の個性——力強い木目が語る日本の記憶

一方、欅は日本の住まいの歴史と深く結びついてきた樹種です。力強く波打つ木目、飴色へと変化していく色合いは、古くから床柱や框、家具材として重宝されてきました。硬く粘り強い性質を持ち、長年の使用にも耐える堅牢さを備えています。

欅の木目は一本一本表情が異なり、同じ樹から取れた材であっても、部位によって現れる杢目は千差万別です。この個体差こそが、量産品にはない一点物としての価値を邸宅の家具にもたらしていると言えるでしょう。

オイル仕上げが育てる艶——使い込むほど深まる色合い

家具材の魅力を最大限に引き出す仕上げとして、オイル仕上げは邸宅家具においてしばしば選ばれる手法です。表面に厚い塗膜を作るのではなく、木そのものの呼吸を妨げず、素地の質感を活かすことができる点が支持される理由です。

オイルは木肌に浸透し、使い込むほどに手の脂や日々の手入れと相まって、独特の艶を育てていきます。ウォールナットであれば深い色合いに落ち着きが増し、欅であれば飴色がより一層豊かに変化していく。この経年美こそ、既製品にはない造作家具ならではの魅力ではないかと感じています。

定期的なオイルの塗り直しという手入れの手間はありますが、それも家具との対話の一部と捉えることができます。手をかけた分だけ表情を深めていく樹種の性質は、暮らしの豊かさそのものを映し出しているように思われます。

造作家具に宿る継承の思想——次世代へ受け継ぐ設え

邸宅における家具材選びは、その場限りの意匠にとどまるものではありません。百年先を見据えた住まいづくりにおいて、家具もまた次世代へと受け継がれていく存在であるべきだと私たちは考えています。

ウォールナットや欅といった樹種は、経年によって劣化するのではなく、むしろ味わいを増していく素材です。修繕やメンテナンスを重ねながら使い続けることができるという点においても、これらの樹種は世代を超えて住み継がれる家具材にふさわしい性質を備えていると言えるでしょう。

一つの家具が親から子へ、子から孫へと手渡されていく光景は、単なる物の継承にとどまらず、その家に流れる時間や記憶をも受け継ぐ行為なのではないでしょうか。樹種選びという小さな判断の積み重ねが、住まいの百年を支える礎になると私たちは信じています。

よくあるご質問

ウォールナットと欅、どちらが邸宅の家具材として適していますか。

どちらが優れているというものではなく、空間の雰囲気や住まい手の好みによって選び分けることが望ましいと考えています。落ち着いた洋の趣を求めるならウォールナット、日本の伝統的な佇まいを大切にするなら欅が馴染みやすい傾向があります。

オイル仕上げの家具はどのくらいの頻度で手入れが必要ですか。

使用環境や頻度によって異なりますが、一般的には半年から一年に一度程度のオイルの塗り直しが目安とされています。詳細な手入れ方法については、家具を扱う専門の職人にご相談いただくことをおすすめいたします。

経年変化による色の変化は元に戻せますか。

樹種が自然に経年変化していく色合いは、その素材が歩んできた時間の証でもあります。人工的に完全に元の色調へ戻すことは難しい場合が多く、むしろその変化自体を楽しむ姿勢が、邸宅家具との付き合い方として大切だと考えています。

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