継ぎ研究室

別荘という遺産——軽井沢・湘南、セカンドハウスを継ぐ選択

公開2026.07.12 更新2026.07.12
別荘という遺産——軽井沢・湘南、セカンドハウスを継ぐ選択

祖父母の代から受け継がれた軽井沢や湘南の別荘。かつては家族の団らんの場であったその建物が、いつしか「相続したものの持て余す資産」になってはいないでしょうか。継ぎ研究室では、別荘という遺産をどう次世代へつなぐかを考えます。

なぜ別荘は「負動産」になりやすいのか

別荘は本来、豊かな時間を過ごすために建てられたものです。しかし世代が代わると、その豊かさを支えていた前提そのものが崩れていきます。子世代は仕事や子育てで多忙を極め、遠方の別荘まで足を運ぶ余裕を持てません。結果として建物は年に一度、あるいは数年に一度しか使われず、湿気や経年劣化が静かに進行していきます。

加えて、別荘は都市部の住宅と比べて管理の手間が大きいという事情もあります。庭木の手入れ、屋根や外壁の点検、水回りの凍結対策など、所有しているだけで発生するコストと労力は少なくありません。使われない期間が長くなるほど、資産としての価値は目減りし、いつしか『相続したくない不動産』としての側面が強くなっていきます。これが、別荘が『負動産』と呼ばれるようになる背景です。

私たちがご相談をお受けする中でも、『売却するか、残すか判断がつかない』という声を多く伺います。しかし、判断を先延ばしにするほど建物の状態は悪化し、選択肢は狭まっていきます。まずは『なぜ使われなくなったのか』という原因を丁寧に見極めることが、次の一歩を考える出発点になります。

使われない別荘を家族の拠点へ再生する視点

使われなくなった別荘を再生する際、まず問い直すべきは『誰のための、どんな時間を過ごす場所か』という点です。かつての別荘は、家長を中心とした一つの家族像を前提に設計されていることが少なくありません。しかし今の世代は、夫婦それぞれの仕事や、独立した子世代の家族、あるいは友人を招く場としての使い方など、多様な過ごし方を求めています。

そこで有効なのが、間取りを大きく壊さずに『用途の重心』を移すという発想です。例えば、使われなくなった大人数用の広間を、家族それぞれが個別に過ごせる小さな居場所へと分節し直す。あるいは水回りを刷新し、短い滞在でも快適に過ごせる設備を整える。こうした調整によって、月に一度でも訪れたくなる場所へと生まれ変わらせることができます。

別荘の再生は、単に古さを解消することではありません。建物が持つ記憶や地域との関係性を残しながら、今の暮らし方に合わせて機能を組み替えていく作業です。継ぎ研究室では、こうした再生を『別荘を捨てるか残すか』という二択ではなく、『どう住み継ぐか』という問いとして捉えています。

次世代のライフスタイルに合わせた二拠点の再設計

近年、都市部での仕事を続けながら、週末や長期休暇を軽井沢や湘南で過ごすという二拠点の暮らし方が、経営者層を中心に改めて注目されています。かつての別荘が『非日常のための特別な場所』だったのに対し、今求められているのは『もう一つの日常』としての機能です。仕事のための書斎的な空間や、オンラインでの打ち合わせに適した環境など、別荘にも都市生活と地続きの機能が求められるようになっています。

また、相続した別荘を次世代が使い続けるためには、管理のしやすさも重要な要素です。遠隔での見守りが可能な設備や、断熱性能を高めて滞在時の負担を減らす工夫など、頻繁に通えなくても良好な状態を保てる仕組みを整えることが、結果として『使われ続ける別荘』につながります。

二拠点の暮らしは、家族それぞれの世代が異なる目的で同じ場所を使うことも意味します。祖父母世代がゆったりと過ごすための空間と、子世代が仕事をしながら家族と過ごすための空間。この両立を可能にする再設計こそが、次の百年を見据えた別荘のあり方だと考えています。

継承を前提とした別荘リノベーションの実際

別荘の再生を検討する際、多くの方がまず気にされるのが『どこまで手を入れるべきか』という点です。建物の骨格がしっかりしている場合、外観や構造を大きく変えずに、断熱や設備といった『見えない部分』を刷新するだけで、住み心地は大きく変わります。逆に、水回りや配管など経年劣化が進んでいる部分を放置すると、将来的により大きな修繕が必要になる可能性があります。

また、相続を見据えた再生では、名義や維持費の分担についても早い段階で家族間の話し合いを持つことが望ましいといえます。建物をどう使うかという設計上の判断は、誰がどのように費用を負担し、誰が管理の中心を担うのかという合意と切り離せません。この点は、単なる建築的な検討にとどまらず、家族の関係性そのものを見つめ直す機会にもなり得ます。

よくあるご質問

相続した別荘のリノベーションは、どのくらいの費用がかかりますか。

建物の状態や再生の範囲によって大きく異なります。断熱・設備更新を中心とした改修と、間取り変更を伴う大規模な再生とでは、必要となる費用も工期も変わってきます。まずは建物の状態を確認したうえで、優先順位を整理することをおすすめしています。

古い別荘でも、快適な二拠点生活の拠点として再生できますか。

建物の構造がしっかりしていれば、多くの場合再生は可能です。断熱性能の向上や設備の刷新によって、築年数を重ねた別荘でも一年を通じて過ごしやすい環境へと近づけることができます。まずは現況の調査からご相談いただくことが多いです。

家族間で別荘の扱いについて意見が分かれています。どう進めればよいですか。

別荘の再生は、費用や使い方だけでなく、家族それぞれの思い入れが絡む繊細なテーマです。まずは『残すか手放すか』ではなく『どう使えたら良いか』という視点で対話を始めると、合意形成がしやすくなる傾向があります。

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